本記事は、2018年6月14日に開催された「日米中国際フォーラム(溶融塩炉技術に関する会合)」の要約記録です。
※本記事の内容は開催当時(2018年時点)の情勢・情報に基づくものであり、関係者のプライバシーに配慮して登壇者名や個別組織名は一般的な表記(「有識者」「専門家」「関連企業」等)に置き換えて記載しています。
1. 日本の政策動向と課題(政治・行政・教育の視点)
エネルギー基本計画への位置づけ
- 政府のエネルギー基本計画改定に向けた議論の中で、重点的に取り組むべき次世代技術項目として「溶融塩炉」を明記する方針が進められていることが共有されました。
- 再生可能エネルギーの導入拡大に伴い懸念される出力変動を補うための、「安定したバックアップ電源」としても溶融塩炉への期待が寄せられています。
科学技術力と高等教育への懸念
- 有識者より、日本の科学技術論文数や世界大学ランキングの低下、大学院進学者の減少に対する強い危機感が示されました。
- 国立大学法人化以降の運営費交付金の削減や少子化を背景に若手研究者のポストが減少している現状を指摘し、初等・中等・高等教育への公的支出(対GDP比)の増額と、次世代原子力技術を含む先端研究へ若者が参画できる環境整備の必要性が訴えられました。
関連省庁の姿勢
- 原発の安全性確保や使用済燃料の処理問題、2050年に向けた低炭素化の観点から、次世代革新炉技術の国際動向を注視しつつ、幅広く研究開発の選択肢を検討・推進していく意向が示されました。
2. 各国の溶融塩炉開発の進捗動向
中国の動向
- 中国科学院などを中心に、トリウム溶融塩炉(TMSR)の国家プロジェクトが精力的に推進されています。
- 固形燃料型と液体燃料型の両面で開発を進めており、実証用小型炉(数メガワット規模)の建設・運転を経て、将来的にはモジュール型炉の実用化やトリウム/ウラン燃料サイクルの確立を目指しています。また、高温熱を利用した水素製造なども視野に入れた総合的なエネルギーシステムとして計画されています。
米国の動向(民間主導のアプローチ)
- 低コスト発電と造船技術の活用:石炭火力よりも安価な電力供給を目指し、造船所の大規模生産技術を活用した「海上浮動型プラント(バージ船型)」による溶融塩炉の設計・配備計画(島嶼国などを想定)が進められています。
- 使用済燃料の処理・燃料化:軽水炉から出る使用済燃料を乾式再処理等の技術で溶融塩炉の燃料として再利用し、放射性廃棄物を大幅に減容・短寿命化(数百年レベルへの低減)するアプローチが、民間ベンチャー主導および政府支援のもとで研究されています。
3. 国内における技術提案と次世代研究者からの提言
統合型溶融塩高速炉の設計提案
- 国内研究者より、炉心構造の工夫や液体燃料の連続再処理システムを組み合わせた「統合型溶融塩高速炉」の設計案が提示されました。
- 燃料デブリやアクチノイドの核変換(効率的な消滅処理)による高レベル放射性廃棄物の負担軽減、および過酷事故が原理的に起きにくい安全設計(冷却材沸騰や圧力破損のリスク低減)が強調されました。
若手研究者・学生からのメッセージ
- 原子力・エネルギー工学を専攻する学生らが登壇し、「次世代原子力技術の選択肢(溶融塩炉、高温ガス炉、高速増殖炉など)を狭めず、若者が夢を持って研究・挑戦できる場を残してほしい」という要望書・メッセージを発表しました。
- これに対し、登壇した政治家や専門家からも、次世代を担う若い頭脳の育成と支援を強化していくことへの賛同と激励が送られました。

