本記事は、2017年6月21日に開催された「第1回 溶融塩炉(MSR)総合勉強会」の要約記録です。
※本記事の内容は開催当時(2017年時点)の情勢・情報に基づくものであり、登壇者のプライバシーに配慮して個人名や個別組織名は一般的な呼称(「国会議員」「専門家」「関連省庁」等)に置き換えて記載しています。
1. 開催趣旨と政治・行政の動き
原子力政策の現状と課題認識
- 震災以降のエネルギー政策の再構築が進む中、ベースロード電源としての原子力の重要性が再確認される一方、安全性への国民的懸念や使用済燃料(バックエンド)の最終処分問題が依然として重い課題である点が指摘されました。
- 従来の第3世代・第3.5世代軽水炉路線だけでなく、より根本的な安全性向上と廃棄物減容を可能にする「第4世代革新炉」への転換を検討すべき時期に来ているとの共通認識が示されました。
国のエネルギー基本計画への反映に向けた提言
- 過去に推進されてきた高速増殖炉計画の停滞を踏まえ、それに代わり得る有力な選択肢として「溶融塩炉(MSR)」を評価する声が上がりました。
- 政府のエネルギー基本計画改定に向け、官庁(経済産業省、文部科学省等)や電力業界と連携し、研究開発・実証に向けた政策的位置づけを獲得していく方針が示されました。
2. 溶融塩炉(MSR)の技術的特徴と優位性
液体燃料・常圧運転による本質的安全設計
- 常圧運転:冷却材や燃料が高圧水ではないため、配管破断による大規模な蒸気爆発や減圧事故のリスクが原理的に極めて低くなります。
- 自己制御性:液体の熱膨張特性により、温度が上昇すると自然に核反応が抑制される強い負の反応度フィードバックを持ちます。
- 受動的安全性(フリーズ弁):非常時や電源喪失時には、炉底の冷却弁が溶融して燃料塩が重力で下部の安全ドレンタンクへ自然落下し、冷温停止状態を維持できる構造が解説されました。
核燃料サイクルと放射性廃棄物の減容・短寿命化
- 軽水炉から生じる使用済核燃料から、乾式再処理等の手法を用いてウランや超ウラン元素(マイナーアクチノイド)を分離・加工し、溶融塩炉の燃料として投入するリサイクル構想が提示されました。
- これにより、本来であれば放射能レベルの減衰に数万年〜十万年単位の地層処分を要していた高レベル廃棄物を、核変換(消滅処理)によって数百年の管理期間で済むレベルまで短縮・減容できる可能性が示されました。
3. 各国の動向と日本が目指すべき研究開発
加速する海外(米国・中国等)の民間・国家プロジェクト
- 米国:エネルギー省(DOE)の支援を受けつつ、複数の民間ベンチャーが主導して、早期実証・小型モジュール化に向けた試験設備や概念設計をハイペースで進めている実態が共有されました。
- 中国:国家科学院が中心となり、大規模な予算と人員を投じて実験炉の建設や実機部品の試作を進めており、国際的な先行争いが激化しています。
日本国内の技術蓄積と今後のロードマップ
- 日本国内でも過去数十年にわたり、大学や研究機関(研究所など)において溶融塩炉の熱流動解析、材料(耐腐食合金)、核特性評価などの基礎研究が着実に蓄積されてきた経緯が報告されました。
- 今後はコンピュータシミュレーション技術や小規模な模擬・電気加熱試験を組み合わせ、開発期間を短縮しながら、産官学が連携して実証炉・実験炉の実現に向けたロードマップを描く重要性が強調されました。

